『哲学者への質問』著者:イアン・オラソフ/訳者:月谷真紀
本書はニューヨークの街角で「哲学者だけど質問ある?」と掲げて行われた哲学に関する問答集です。
哲学というと何だかこむずかしくて、ふだんの生活とは無縁のもの。
きっと多くの方がそう思われていることと思います。
でも、思い出してみてください。
子どもの頃に
“死後の世界はどうなるのか?”
“過去の自分と現在の自分は同じなのか?”
“自分らしさとはどういうことか?”
といった疑問を抱いたことはありませんか?
これらはまさに哲学的な問いということになります。
それでは、子どものときに抱いた哲学的な疑問はどこにいってしまったのでしょう?
本書は“パート1 壮大な質問”、“パート2 身近な質問”、“パート3 実は大事だった質問”という構成になっています。
現在、哲学を縁遠い存在と感じる方は、ぜひ“パート2 身近な質問”から読んでみてください。
たとえば、この章では以下のような質問が登場します。
1.「愛」って何?
4.男が「男である根拠」って何?
7.ホームレスの人に「お金をあげる」べき?
9.自分の「親がいずれ死ぬ」という事実をどう受け入れる?
12.貧しい国からものを買うと、その国の労働者を「搾取」したことになる?
などなど。
個人的に気になったのは、“15.子供を「良い人間」に育てるには?”という質問でした。
この問いの回答案として以下が紹介されています。
・ 共感でき、憧れの対象となるロールモデルを与える。
・ 抽象的な原理原則を具体的で感情に訴えるものにする。
・ もっと楽をして道徳的になれるようにする。
・ 周りの人間が実際に従っているルールを教える。
・ 道徳的な問題を数値化して考えるようにさせる。
・ 集合行動への参加を促す。
なかなか深い言葉が並びますが、哲学者の思考に直にふれたようでとても新鮮でした。
その他にもきっとあなたの心に留まる質問があることと思います。
本書は読む人それぞれに生きるヒントを与えてくれる、そんな一冊です。
(でじお)