★★★　え？ この本どうなってるの？　★★★

2021年12月に刊行した『タキミカ体操』が、
おかげさまで、あっという間に10万部となりました。

読者さんからさっそく熱～い長文のお手紙をいただいたりして、
著者・タキミカさんと監修・中沢さんが本に込めた情熱が、
猛スピードで全国へ広がっていくのを感じています。

編集担当者として、
お求めいただいた皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございました！

さてさて、この本を出してからと言うもの、
ライターさんをはじめ、身近な関係者からも
「おお！　本が開く！」
「ぺターンってなる製本なんですねー」と
幾度も声があがりました。

まるで“ベターッと開脚”しているような本ですよね。

そう言えば誰にも説明してなかったなあ、と気付いたので
この場を借りて「どうして開く本にしたのか」を、
読者の方にもお伝えできればと思います。

ちょっと長いので、
お時間あるときにでもご笑覧ください。

★★★　不良品ではありません　★★★

この特殊な製本は、
出版用語で「コデックス装」と呼ばれています。
「コデックス」の意味や起源は、
古代ローマの「写本」に通じていて、
じつは長い歴史を持った製本だそうです。（初耳）

メリットは、本が開いたままになること。
エクササイズをするときに便利なので、
最近はよくストレッチや運動の本で採用されています。

デメリットは、お金も時間も、余計にかかること。
経費がかかるので、採用するには勇気がいります。
さらに、ときどき「本がバラバラになりそう」と、
不良品に間違われたりもします。
安心してください、剥がれませんよ。

何を隠そうこのコデックス装、
2016年の弊社ミリオンセラー
『どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法』が採用して、
その存在を、日本全国に知らしめた製本なんです！（自慢）

余談ですが、
当時、別の出版社で働いていた私は、
世の中には、とんでもないことを思いつく人がいるもんだなぁ……と
まるで他人事のように眺めていました。

後年、その人が直属のボスになり、
そして私自身もコデックス装を採用しているなんて（←いまここ）、
もちろん想像すらしていませんでした。

閑話休題。

では、なぜ『タキミカ体操』で
コデックス装を採用したのでしょうか。

じつは、他社の本のように
「開いたままエクササイズをしやすいから」
という理由ではありませんでした。

そこには、大きく2つの理由がありました。

★★★　理由その①　　タキミカさんの写真をめいっぱい大きくしたかった！　★★★

通常、ストレッチや体操の本では、
動き方を解説するために、
連続写真を並べる必要があります。

そうすると、丁寧な説明ができる反面
どうしても写真1枚のサイズが
小さくなりがちです。

だけど、この本のコンセプトは
「めくるだけで元気になれる本」だったので、
写真が小さくなるのは避けたい……。

タキミカさんの「太陽みたいな笑顔」は
見た人みんなが元気になるパワーを秘めています。
だから、表情がはっきりとわかるくらい、
タキミカさんの写真を大きくしたい！
できれば、ページにまたがるくらいに。

そんな想いをデザイナーさんに相談したところ、
「それなら、コデックス装はどうでしょう？」と
ご提案いただきました。

コデックスであれば、
通常の製本とちがって、
写真がページをまたいでも読みやすいからです。

↑同じサイズの本と比べると「読みやすさ」は一目瞭然！

提案を聞いた私は
「それだー！」と、
ビビビ！　と感じるものがありました。

そこには
“もうひとつの理由”があったのです―――

★★★　理由その②　「大切な人へ贈る本」にしたかった　★★★

ここで、少しだけ時間を戻させてください。

およそ2年前、
著者・タキミカさんと監修・中沢さんに
私はこのようにご相談しました。
「96歳の私の祖母でも安心してできる
エクササイズの本を作れないでしょうか？」と。
書籍『タキミカ体操』の制作は、
その日から始まりました。

（参照ページ）担当編集者から一言「この本を作ったきっかけ」
https://www.sunmark.co.jp/blog/wp/archives/4817

すると、まさに本を制作している
2021年8月のこと。
その祖母が、
足を骨折して入院することになったのです……！

おそらく3か月くらいで退院だろうという
病院の見解でしたが、
「もし入院が長期になったら、どうしよう……」
ネガティブな考えが、頭をぐるぐる回ってしまう日々でした。

そんな折に、デザイナーさんから
「コデックス装はどうでしょう？」という提案が。
私がビビビ！　ときた理由は、
もうおわかりだと思います。

「そうか！　コデックスなら、
病院のベッドのテーブルでも読みやすい！」

というわけです。

それが製本を決めた
最も大きな理由でした。

もともと、
大切な誰かにプレゼントしたくなる本にできれば、
と制作していました。

「年齢なんて気にしなくて大丈夫！」と
元気づける本なので、
病院や施設へのお見舞いのとき、
贈り物に選ばれるケースもあるだろうと思っていました。

自分をとりまく状況と
本のコンセプトがぴったり重なったので、
ビビビ！　ときたわけです。

幸いなことに、祖母は3か月で退院できて、
『タキミカ体操』を愛読してくれています。

また、発売からわずか数日後には、
関係者の方からの、こんなメッセージも受け取りました。

「車いす生活の母に、渡してきました。
思うように体が動かせない母なのですが、
根の生えていたお尻をスリスリと動かし、
タキミカ体操をやってくれました！
ニコっと笑って……。
（中略）
握力の弱い母でも、製本の工夫のおかげで、
難なくページを読み進めることができました」

こちらも想いがぴたりと届いたかのような、
これ以上ない嬉しいメッセージでした。

そんなこんなで、
ベターっと開く書籍『タキミカ体操』が
誕生したわけです。

以上、
「編集の現場」よりお届けしました！