(国際ライツ部 部長)
世界44か国、総発行部数2500万部超の“小さいけれどグローバル”な出版社の海外窓口は、頼れる「海外交渉のプロフェッショナル」。
血液型:A型
出身地:静岡県
好きな食べ物:チーズ
好きな家事:なし
動物に例えるなら:イモリ
(国際ライツ部 部長)
世界44か国、総発行部数2500万部超の“小さいけれどグローバル”な出版社の海外窓口は、頼れる「海外交渉のプロフェッショナル」。
血液型:A型
出身地:静岡県
好きな食べ物:チーズ
好きな家事:なし
動物に例えるなら:イモリ
本には、1冊をまるごと他の言語に翻訳して販売する「翻訳権」(Foreign Rights)があります。
その権利を売買する窓口が、私たち「国際ライツ部」です。
たとえば、編集者が海外で「日本語に訳したい本」を見つけた場合。翻訳権を扱っているエージェント(代理店)に「日本語の翻訳権を私たちが押さえられるかどうか」を確認し、可能であれば買います。——これが、ライツを「買う」こと。その後、翻訳者により日本語に訳され、1冊の「翻訳書」が誕生します。
反対に、「この本を〇〇語で翻訳出版したい」という海外の出版社からのオファーに対して、条件を交渉して翻訳権を売る。——これがライツを「売る」仕事。私はおもに、この「ライツを売る仕事」をしています。
私がサンマーク出版に入社したのは2015年ですが、サンマーク出版は、かれこれ30年も前から世界を見据えて行動していた出版社だと思います。
そのころ、ライツと言えば、海外からベストセラーを買い翻訳出版することが一般的だったなか、「日本のコンテンツを世界に」と、代表の植木は口ぐせのように言い、おもにアジア圏へのライツの売りを行っていました。私は当時、前職のエージェント会社でクライアントとしてサンマーク出版とかかわっていましたが、小規模ながら、その機動力には、いつも驚かされていました。
全世界で1200万部を突破し、アメリカで大ブームとなりすでに世界40か国で翻訳出版された『人生がときめく片づけの魔法』は大いに話題になりましたが、これも質の高いコンテンツをつくり、世界で勝負するという思いが形になったものだと思います。
私が普段やり取りするのは、世界各国の出版社やエージェントです。
アジア圏では日本のコンテンツは非常に人気が高く、「日本のベストセラーをいち早くキャッチして自国でヒットさせたい」という風潮があります。刊行前から、ホームページで情報を入手した現地の編集者から、「この本を検討したい」と事前に連絡が来ることもよくあります。
反対に、欧米の場合は、待っていてお声がかかることはまずありません。これまでの海外ブックフェアで年月をかけて築いてきた関係性をいかしながら、さらに「日本でこんなに売れている本」という案内をつけて、売り込んでいくスタイル。とくにアメリカは自国以外のオリジナルは非常に敷居が高いという印象です。
各国のエージェントや出版社との商談やコミュニケーションは、基本的に英語です。
私は根っからの日本人で、留学は高校生から。中学卒業後、アメリカの高校へ入学し、そのまま現地の大学へ進学し卒業しましたが、私のキャリアはとても順風満帆といえるものではありませんでした。
大学卒業後、1年間のワーキングビザで働いていたものの、ビザの更新ができなくなりいったん帰国。ここからが大変でした。第二新卒で、しかも就職活動の開始時期も大幅に遅れています。出版社に手当たり次第、片っぱしから電話をかけ、売り込みをして、通訳の仕事や、取材音声の文字起こしから始まりました。そうこうしているうちに、小規模の出版社に拾っていただくことができました。入社早々、世界中の児童書が一堂に会する「ボローニャ・ブックフェア」に出展する仕事を担当することになり、それが「海外ライツ」との最初の出会いでした。
数年後、業界最大手である株式会社タトル・モリ エイジェンシーに転職。その後、植木社長にお声がけいただき、サンマーク出版に入社することになりました。
サンマーク出版で働き始めてから、「翻訳書」の新たな可能性に気付かされるようになりました。
たとえば、2015年に刊行された小説『コーヒーが冷めないうちに』(川口俊和著)は国内で85万部を記録。映画化までされたあと、あっという間に世界的ベストセラーへと羽ばたきました。
韓国、中国、タイ、台湾、ベトナム、ドイツ、チェコ、ハンガリー、イタリア、イギリス、スペイン、オランダ、アメリカなど、13の言語で翻訳出版され、さらに20言語での刊行が決まっている状態です。
とくに、ロックダウン中のイタリアでは、書店も休業に追い込まれ、発売時のPRもできない中、異例の大ヒットとなりました。現地の大手新聞「Corriere della Sera」のランキングでは、2020年5月第1週に翻訳小説の9位、5月10日付では3位に浮上。その後も順調に売り上げを伸ばし、著者の川口先生はイタリアで著名作家として広く知られるようになりました。「日本人作家のデビュー作がここまで売れるのは“奇跡”」と仲介にあたったエージェントにも驚かれたほどです。
この『コーヒーが冷めないうちに』の海外進出で、今までにない手ごたえを感じた私は、より能動的に「攻めるライツ」を意識するようになりました。
たとえば、『正々堂々』(西村宏堂著)という本は、「LGBTQで、僧侶で、メイクアップアーティスト」という著者の経歴を聞き「欧米でも人気が出るはず」と直感が働きました。通常よりも早い段階で海外営業を始めたい、と社長に直談判し、日本語版の完成と同時に、世界に向けて「仕掛けていく」ことに成功、イギリスでの英語版出版が決まりました。